第93回日本結核病学会総会会長を拝命した鈴木でございます。一言ご挨拶いたします。日本結核病学会はもっとも古い学会の一つで、初代会長は北里柴三郎博士であることは皆様ご存知のことと存じます。その後の歴代会長も当時の大物教授が主体であり、浅学菲才な私が会長を務めることには、畏れ多い思いを感じている毎日でございます。 私の抗酸菌との出会いは、当時の久世文幸教授から命じられたDNAプローブ法キットを用いた、MAC菌株のM.aviumとM.intracellulareへの分類作業が嚆矢となります。卒業3年目であり、肺結核も、まして非結核性抗酸菌症もほとんど知らない状態での、研究というにはおこがましい作業でしたが、結核より先に非結核性抗酸菌症を研究した最初の世代ではないかと自負しております。 結核はむしろ2000年からの現勤務先、当時の国立療養所近畿中央病院に移動してから、非常にたくさんの症例を経験して実地に訓練いたしました。当時大阪ではまだまだ結核患者がたくさんおり、2000年代前半には多剤耐性結核患者30人以上を含む230人もの入院患者を抱えておりました。その後結核患者は順調に減少しましたが、公衆衛生的な観点も含めてまだまだ重要な疾患であることは言うまでもないことです。 一方、非結核性抗酸菌症罹患率の著増は既に人口に膾炙しているところであります。それらを踏まえて、第93回のテーマを「結核研究の伝統を難治抗酸菌症克服に活かす」としました。結核研究の伝統は、基礎、臨床、公衆衛生、海外への医療協力、DOTS等の看護面など、すべての点で呼吸器疾患の先頭を走ってきたと言っても過言ではありません。過去の素晴らしい経験知識を、現在の難治抗酸菌症である非結核性抗酸菌症と多剤耐性結核の克服に活かしていくことに、第93回総会が少しでもお役に立てば幸甚に存じます。 現在プログラム委員会では、非結核性抗酸菌症、多剤耐性結核に関する招請講演や特別講演を企画しております。シンポジウム、教育講演でも同様の題目に加えて、IGRAや生物学的製剤の話題を取り上げる予定です。前々回から始まった抗酸菌症エキスパートや初学者向けの集中セミナーも引き続き開催いたします。 例年より少し遅い6月の、皆様が参加しやすい土曜・日曜に大阪国際会議場で開催いたします。多くの演題登録と多くの皆様の参加を心待ちにしております。