会長挨拶
第100回日本結核・非結核性抗酸菌症学会学術講演会
会 長
長谷川 直樹
慶應義塾大学医学部感染症学教室
第100回日本結核・非結核性抗酸菌症学会学術講演会の開催にあたり
 慶應義塾大学医学部感染症学教室の長谷川直樹です。本学会は結核研究の結核対策の進展のため学術団体として1923年に北里柴三郎先生が日本結核病学会として設立され、同年に第1回目の学術集会を東京で開催されました。以来、先人の並々ならぬご尽力結果、我が国の結核は世界にも類を見ないスピードで減少し、2021年にはつい人口10万人あたりの新規患者数が10を下回り、2022年にはさらに8.2まで低下し、WHOの定める結核低い蔓延国になりました。100回の節目の学術講演会を迎えて、結核が低蔓延国入りしたことは本学会のミッションは一部果たされたとも言えます。我が国の特徴である高齢者結核も今後の多死社会の中で確実に減少し、結核罹患率のさらなる低下が予測されますが、それと表裏をなす未感染者が増加と、結核が若年者の輸入感染症となってゆく様相、さらに制御が困難な空気感染である点を鑑みると今後も油断はできません。さらに、結核病棟の閉鎖、結核病床の削減が進み、結核の診療経験の機会が減少する中で、結核医療の体制を根本的に見直す時期を迎えていると言えます。
 一方、同じ抗酸菌症でも非結核抗酸菌(NTM)症は呼吸器感染症を中心に、医療関連感染症、様々な先天性および後天性の免疫不全状態に合併する慢性難治性感染症として患者数は世界的に増加傾向にあり、人から人への感染を示唆する報告も散見されます。また、多くの薬剤に自然耐性を有し、効果の期待できる薬剤が乏しいNTMは薬剤耐性菌としても注目され始めました。本学会でも学会名にもとり入れられ、ますます重要なテーマになっていることは周知でありますが、NTM関連の研究の進歩は必ずや結核制圧にも通じると思います。
 本学術講演会が我が国の結核医療の歴史と先人達の功績を改めて知る機会(継往開来)になるともに、様々な先進技術を取り入れながら結核低蔓延状態の維持、さらなる制圧、そしてNTM症という新たな課題に向けて、医療体制、研究の新たな展開へのきっかけ(一新紀元)になれば幸いです。皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
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