日本結核・非結核性抗酸菌症学会 THE JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS AND NONTUBERCULOUS MYCOBACTERIOSIS
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Q&A 1: 免疫抑制治療時における結核治療に関しての質問


Q&A 1 2013年10月21日
質問:免疫抑制治療時における結核治療に関しての質問

自己免疫疾患患者さんが多く,ステロイド,免疫抑制剤,生物学的製剤を使用する際 に関して伺いたいのですが,
現在画像的には活動性の結核を疑わせる所見がなく治療歴もない患者さんで,胸部X-PやCTにて縦隔リンパ節の石灰化を認めるものの,T spotあるいはQFTが陰性の場合,INHの予防投与を行うべきでしょうか.
また,既に免疫抑制状態や,サルコイドーシスの患者さんではT spot, QFTはあてにならずINHを投与すべきでしょうか.
同様に肺尖胸膜肥厚,S1,2の索状影はあってもT spotあるいはQFTが陰性の場合はいがでしょうか.

回答:2件 2013年10月30日11:10
①現在画像的には活動性の結核を疑わせる所見がなく治療歴もない患者さんで,胸部X-PやCTにて縦隔リンパ節の石灰化を認めるものの,T spotあるいはQFTが陰性の場合,INHの予防投与を行うべきでしょうか.

結核既感染者からの発病の危険は年率0.1程度。しかし、陳旧性の陰影があるもの、免疫抑制宿主からの発病の危険は、 201306.pdfにある通り高くなります。
陳旧性の陰影があるものの発病率が陰影のないものの6倍などの成績、は、かつて結核既感染率が高かった時代の成績ですが、陳旧性陰影がある既感染者と陳旧性の陰影のない既感染者との比較と考えてよいと思います。今日、陳旧性の陰影が本当に結核によるものかどうかについては、よくわかっていません。
また、陳旧性陰影と免疫抑制宿主であるためとで、相乗的に高くなるかどうかについての情報はありません。相乗的に高くなるとしたら、IGRA陰性で陳旧性陰影があるの場合の発病の危険は無視できず、IGRA陰性であっても潜在結核感染治療の対象となると思います。
ただし、70才以上の高齢者では、薬の副作用が無視できず、かつて、陳旧性陰影がある高齢者に潜在結核感染治療を試みたところ、肝障害など副作用が多く、広く行うのは実施困難と判断したことがあります。

②また,既に免疫抑制状態や,サルコイドーシスの患者さんではT spot, QFTはあてにならずINHを投与すべきでしょうか.

については、IGRAおよび画像ほか感染を思わせる情報がない場合、潜在結核感染治療を行うかどうかですが、既感染率は、60歳代でも30%、50歳代は10%となります。70才未満での未感染者の割合の高さ、および副作用などの危険を考えると、潜在結核感染治療を正当化するのは難しいと思います。

③同様に肺尖胸膜肥厚,S1,2の索状影はあってもT spotあるいはQFTが陰性の場合はいかがでしょうか.

QFT陰性陳旧性陰影がある場合の、陳旧性陰影が結核であるかどうかについては、よくわかりません。
免疫抑制などのリスク因子がない場合の発病の危険は、潜在結核感染治療を正当化できるか難しいと思います。

治療委員会 吉山 崇(復十字病院)

回答 2013年10月30日11:10
潜在性結核感染症治療指針は、IGRA陽性者を対象にしており、陰性者については特に述べられていないと思います。
基本的にはIGRA陰性は未感染として扱うのが前提ですので、このような事例でも治療はしないと考えられます。
しかし、結核菌は休眠状態で長年生存し続けると考えられており、このような状態ではIGRA検査は陰性になると考えられます。
従いまして、IGRA陰性者は感染者(結核菌は休眠状態)と未感染(あるいは感染後菌を完全にクリアーした)に分けられると考えられ、免疫抑制治療の際にIGRA陰性感染者(結核菌は休眠状態)から休眠期の結核菌が活動を始め発病に至る可能性を完全に否定できないと思います。
ただし、これを区別する手段が現状ありませんので、IGRA陰性であれば全て未感染とし免疫抑制治療時でも治療しないと考えられます。
私としましては、このようなことを総合して、IGRA陰性であれば免疫抑制治療時に予防投与を積極的に支持することは出来ないと思います。
しかし、結核菌の休眠状態を想定して、慎重な経過観察は必要と考えます。

代議員 原田 登之(免疫診断研究所)

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